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しばらく経って、女の子はぱたりと来なくなってしまいました。
それと同じくして、男の子の体調はどんどん悪くなっていきました。
両親は頭を抱え、医者も手を上げてしまいます。
月と太陽が交互に空を上がるのを何度も眺め、時間は無駄に経っていくばかりでした。
その間、小鳥が窓枠に泊まっていることにも気づかずに。
ある日、窓枠には女の子が座っていました。
「今日は広間で大道芸が見れるんですって。一緒に行きましょう?」
男の子を見て笑う女の子の姿に、男の子は思わず頷いてしまいました。
車椅子を出して、女の子がそれを押して、車椅子には男の子が座って。
石造りの町並み、石畳の地面。
何かを見るたびに女の子に男の子は尋ねました。
「あれは何?」
「新聞屋さん」
「あれは?」
「靴磨き」
男の子にはどれもが新しく見えて、何もかもが楽しげに見えました。
悪かったはずの体調も驚くほど良く感じました。
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