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そして広間が見えてきた時でした。
長い長い坂道でした。
そんなに急な坂道ではありませんでした。
女の子はふと尋ねました。
「他にお友達はいないの?」
明るい声。
楽しげな笑み。
男の子は答えました。
答えてしまいました。
「いないよ」
途端に、パッと女の子は手を放しました。
満面の笑みでした。
満面の嘲笑でした。
「いってらっしゃい。楽しんで来てね」
恐怖に顔を引き吊らせた男の子の目にはしっかり見えました。
その笑う女の子の肩には一羽の小鳥。
長い長い坂道でした。
止まらない車椅子はどんどん速くなりました。
どんなに頑張っても、どんなに叫んでも、どんなに祈っても。
車椅子はどんどん速く。
そして――――…
遠くで遠くで、馬車が何かを轢きました。
その様子を女の子は笑って見てました。
黒い黒い女の子でした。
手の中には真っ赤な小鳥が一羽。
翼をもがれて死んでいました。
「残念、間違えなきゃ良かったのにね」
女の子は「違った」と嗤いました。
「結局、台本通りになっちゃったね」
そう言って笑っていましたとさ。
おしまい。
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