1.悪魔

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そして広間が見えてきた時でした。 長い長い坂道でした。 そんなに急な坂道ではありませんでした。 女の子はふと尋ねました。 「他にお友達はいないの?」 明るい声。 楽しげな笑み。 男の子は答えました。 答えてしまいました。 「いないよ」 途端に、パッと女の子は手を放しました。 満面の笑みでした。 満面の嘲笑でした。 「いってらっしゃい。楽しんで来てね」 恐怖に顔を引き吊らせた男の子の目にはしっかり見えました。 その笑う女の子の肩には一羽の小鳥。 長い長い坂道でした。 止まらない車椅子はどんどん速くなりました。 どんなに頑張っても、どんなに叫んでも、どんなに祈っても。 車椅子はどんどん速く。 そして――――… 遠くで遠くで、馬車が何かを轢きました。 その様子を女の子は笑って見てました。 黒い黒い女の子でした。 手の中には真っ赤な小鳥が一羽。 翼をもがれて死んでいました。 「残念、間違えなきゃ良かったのにね」 女の子は「違った」と嗤いました。 「結局、台本通りになっちゃったね」 そう言って笑っていましたとさ。 おしまい。
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