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「おにいちゃんじっと見すぎだよ。ねえ、似合ってるかな」
「ああ、その、かわいいと思う」
「やったっ。それじゃあ夏はこれで決まりだね。おにいちゃんも惚れ直したよね?」
「うん、したした」
俺の軽く答えた反応に亜希ちゃんは少しむくれた表情になる。でもすぐに口元に悪そうな笑みをつくって、すかさず真顔に戻した。
「……ねえ、おにいちゃん」
亜希ちゃんは前のめりになり、顔を寄せるような姿勢で俺に近づいた。
「わたしね、夏は攻めることに決めたんだ」
その声音は真剣であった。そして一言、
「おにいちゃんには、もう一度本気で好きになってもらいたいから」
シーン、と日常の音が一瞬しなくなった気がした。
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