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ぼくは、ゆっくりと目を覚ました。
覚ましたという言い方は、普通はおかしいかもしれない。
でも、ぼくは小さなベッドの上で、確かに目を覚ましたのだ。
「……。」
ぼくはなにも言葉を発しない。
当たり前だ。もしもぼくが言葉を発したのなら、誰もが奇妙に思うはずだからだ。
でも、そこには、いつもの『彼女』はいなくて。
たくさんのぬいぐるみが置かれた、その女の子らしい可愛い部屋には
ただただ不気味なほどの静寂が流れていた。
それはほんの数日前の出来事だった。
その日はちょうど、クリスマスイブの日だった。
『彼女』は、いつも通りぼくを鞄の中に入れて学校へ行こうとしていた。
差し掛かる交差点。信号は青信号。それを渡るあの子。
一瞬の出来事だった。
青信号を渡っている彼女に、信号を無視をしたトラックが突っ込んできた。
避けきれず、軽い彼女の身体は、赤いソレと一緒に宙を舞った。
同時に鞄も吹き飛ばされ、ぼくの意識も、そこで途切れた。
次に目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった。
横を見ると、彼女の母親が、泣きながら彼女の手を握っていた。
彼女は身体中包帯を巻かれて、人工呼吸器をつけてベッドに横たわっていた。
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