夏祭りから生まれる神

2/2
前へ
/11ページ
次へ
「………。」 真剣な目つきで太鼓を叩く少年がいた。 背は低いが顔をみたところ年は13か14くらいだろう。 「………!!」 最後の音符を叩いた少年が笑顔で後ろを振り向きニコッと笑う。どうやら、ノルマクリア出来たらしく画面には「ノルマクリア成功」の文字が映されていた。 少年は友達に話しかけた。 「初めて、鬼をクリアしたよ!!」 「お前スゲー!!!神だな。」 もう一人の友達は「こんなの楽勝」とでも言わんばかりに太鼓に100円を入れて叩き始めた。 曲は、KAGEKIYOであった。その友達は当たり前のように軽く全良した。 「ねえ、なんでそんなに上手なの?」 少年は聞いた。 「練習!!」 そう一言だけ答えた友達はどこかに行ってしまった。 「僕も……あんなに上手になれるのかな?」 「なれるさ!!優は神だからな!!」 彼は優という名前らしい。 この時、彼が「太鼓の激戦区」東京のランカーになることなど誰も知らないのであった……。 三日後、優はまた太鼓をしに行った。 やわらか戦車という曲が練習になるという話を昨日、友達から聞いたのだ。 やわらか戦車はいろいろな三連が詰まっている。今の彼にはいささか厳しいと思われた……。 しかし、彼は二度ノルマ落ちするとあることを思い付いた。 それは……分業である。 右は面のみ左は縁のみをたたく。 これならば、テクニックなどはあまり関係なく太鼓がうてる。 「分業さえできれば楽勝」 そう言うと彼はやわらか戦車を難無くクリアしたのだった。 彼の後ろにギャラリーができるようになった。 しかし、そのギャラリーの注目は一瞬にして別の人に移ってしまう。 隣で叩いてた大学生である。彼は曲を難易度順に並び替え星10のとんでもない曲を叩き始めたのだ。優はその光景をただ呆然と見つめることしかできなかった。それ程衝撃的な曲だった。 その曲とはDoom Noizだった。 大量に襲い掛かる五連打複合、16→24に音符の長さが変わる複合、低速ソフラン………。 優はとんでもない曲を見せられ、ただ「あ……あ………」と声にならない叫びをあげることしかできなかったのだ……。 第一章 夏祭りから生まれる神 完
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加