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「………。」
真剣な目つきで太鼓を叩く少年がいた。
背は低いが顔をみたところ年は13か14くらいだろう。
「………!!」
最後の音符を叩いた少年が笑顔で後ろを振り向きニコッと笑う。どうやら、ノルマクリア出来たらしく画面には「ノルマクリア成功」の文字が映されていた。
少年は友達に話しかけた。
「初めて、鬼をクリアしたよ!!」
「お前スゲー!!!神だな。」
もう一人の友達は「こんなの楽勝」とでも言わんばかりに太鼓に100円を入れて叩き始めた。
曲は、KAGEKIYOであった。その友達は当たり前のように軽く全良した。
「ねえ、なんでそんなに上手なの?」
少年は聞いた。
「練習!!」
そう一言だけ答えた友達はどこかに行ってしまった。
「僕も……あんなに上手になれるのかな?」
「なれるさ!!優は神だからな!!」
彼は優という名前らしい。
この時、彼が「太鼓の激戦区」東京のランカーになることなど誰も知らないのであった……。
三日後、優はまた太鼓をしに行った。
やわらか戦車という曲が練習になるという話を昨日、友達から聞いたのだ。
やわらか戦車はいろいろな三連が詰まっている。今の彼にはいささか厳しいと思われた……。
しかし、彼は二度ノルマ落ちするとあることを思い付いた。
それは……分業である。
右は面のみ左は縁のみをたたく。
これならば、テクニックなどはあまり関係なく太鼓がうてる。
「分業さえできれば楽勝」
そう言うと彼はやわらか戦車を難無くクリアしたのだった。
彼の後ろにギャラリーができるようになった。
しかし、そのギャラリーの注目は一瞬にして別の人に移ってしまう。
隣で叩いてた大学生である。彼は曲を難易度順に並び替え星10のとんでもない曲を叩き始めたのだ。優はその光景をただ呆然と見つめることしかできなかった。それ程衝撃的な曲だった。
その曲とはDoom Noizだった。
大量に襲い掛かる五連打複合、16→24に音符の長さが変わる複合、低速ソフラン………。
優はとんでもない曲を見せられ、ただ「あ……あ………」と声にならない叫びをあげることしかできなかったのだ……。
第一章 夏祭りから生まれる神 完
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