第Ⅰ章―始まり― ★

2/12
前へ
/221ページ
次へ
   気持ちのいい青空が広がり、活気のある町人達の声が、今日も町を賑わせていた。 「――とりあえず、死ね」  ボコォーッ! ガタタタタ――!!  ――積み上げられた木箱に男が叩きつけられ、空っぽの木箱が崩れ落ちる。おそらく、野菜が入れられていた箱。八百屋の、野菜を運ぶ為の箱であろう。 「い、いきなり何しやがんだ!」  怒りよりも驚きのが勝る様子で、叩きつけられた男が、見上げるようにして、自分を殴りつけた男に叫んでいる。  平和でのどかな城下町。ここ数年、この町に争いはない。 「てめー! ざけん――」 「黙れっクズ共。わめくな、うるさい。……うっせーって言ってんだろっ!」  話していた相手が突然、吹っ飛ばされ、やった男の肩を掴もうと近付いた、もう一人の男――。  ボコバキッ! ガタガタガタッ……!!  ――男が激しくぶつかった為に、木でできた生ごみ置き場が、派手に音を立てて崩壊した。  やり返した訳ではなく――もう一人の男も、突然現れた男により、派手に飛ばされたのであった。  戦争が終結し、この国も建国684年。それ以降、人々はのどかに争いもなく、平和に暮らしている。 「なっ……!? まだ、何も言ってなかったじゃ――」 「あ゙ー!! うっせーうっせー! ……とりあえず、死ね。オラッ!」  ガンガラガッシャーン!  先に殴られた男が、咎めようとしたもう一人の男まで、間髪入れず、大して話もさせずに『うるさい』と殴ったのを見て、また声を出すのだが――言い終わる前に、男に再び黙らされてしまうのであった。  男により、ぶん投げられた為に、派手な音を立て、地面に転がる男。崩壊した生ごみ置き場に、重なるようにして男達が倒れ込み、辺りには、木の破片が散らばっている。 「はー、疲れる。うるさいっての……迷惑なクズ共め」  一仕事を終えたような口振りで、悪態を吐く男――。首元に手を置き、首を左右にコキコキ――と、鳴らすのであった。  今日も町は、平和そのものである――。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

677人が本棚に入れています
本棚に追加