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ガサゴソ……ヒョイッ!
「ほらよっ、受け取んな」
八百屋の亭主に、男は気絶している2人の懐をあさると、そこから取り出した財布を、投げて寄越したのだった。
パシッ――
「おっと……」
慌てて受け止める八百屋。財布と男を困惑した様子で見る。
「いや、その……なんだ――。この2人、なんかしたのかい?」
しっかり財布を受け取りながらも、罪悪感からか、目線を財布から気絶する男達に申し訳なさそうにやる亭主。男へと目線を戻すと、怪訝そうに話を聞くのである。
「いや? 何も。特には」
パッパッ――と、自分の服に付いた砂埃を払いながら、平然とした顔で言ってのける男。
「……」
「ん? なんだよ?」
――何もしていないのに、人をぶん殴ったのか? と、固まっている八百屋を見て、男はキョトンとしている。
八百屋は、男の様子に顔を引きつらせるのだった……。
――なんだか、関わってはいけない相手に、どうやら関わってしまったようだと、ひしひし感じる、八百屋なのである……。
亭主は、面倒事に首を突っ込んでしまった為に、このままやっかいなことにならないかと、ヒヤヒヤしていた。
だが、一方……男の方はというと――。相も変わらず、不思議そうに八百屋を見ている。誰に話しても、同じ反応をしそうなものだが――八百屋の反応の理由に、男は思い当たらないようなのであった。
八百屋が何か言うのをキョトンとした顔のまま、待ち続ける男。反応を返さねば、次に進めない状況のようである――。
八百屋はどう反応すべきだったのか……。
八百屋は、この時のことを思っては、自分の行動を後悔することになるである――。
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