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愛しすぎて
想いすぎて
手を離したのは弱さじゃないよ。
愛が深すぎたんだ。
相手の全てを守りたくて。
向けられる刃を
自分だけに向かわせたくて
君を傷つける全てから
君を守ろうと思った。
君を奪う全てから
君を救おうと思った。
そして
その全てに「僕」も
入っていたことに気付いた。
だから、「僕」を君から
離さなくちゃと思った。
でもそんなの嫌で、苦しくて
身勝手な想いに吐き気がして
解放されたかった
この答えのない迷路から。
解放してあげたかった
未来を見られない関係から。
だけど、君はそれでいいって言う。
こんなに迷うのは
こんなに苦しいのは
僕が君を愛してるからだって。
そうだよ。
君のこと、
世界の誰よりも僕は愛してる。
どうしよう?
ホントにいいの?
まだ迷ってるし
きっと、ずっと迷うけど
こんなこと言ったら
また君は自惚れちゃうでしょ?
それって好きってこと?…って。
数日後、
アトリエのあるマンションから
自宅へ帰ったと准から連絡がきて
あの犬が描き上がったら見せてって
小さく囁くような声がした。
「写真を」
[ん?]
「あの朝の写真を見たい」
[ああ、]
ブルーモーメント
朝焼けの冴え渡るブルー
[いいよ、大谷…持ってくる]
「うん、ありがとう」
あの朝、
空の青の向こうに
目を凝らして見たのは
空の向こうの、君の姿。
輝かしい未来へ向かう
君の道筋を思って
それがすごく誇らしくて
寂しかった。
それも飲み込んで、
生きていこうと思ったんだ。
君のいない世界でも
僕の生きる未来があるから。
「っ蒼くん!!帰ってたの!?」
「あ、ひろくん」
玄関から叫び声がして
ドドドドッ!と、音がする。
リビングのドアが開いて
オレが座るソファの背を掴んだ。
「た、ただいま!!」
「んふふ、おかえりー」
オレの間近まで、
君がまんまと近付いてきたから
無防備なその顔を掴んで
キスをしてやった。
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