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「ごめん、ひろ…オレ」
解放してあげたい。
こんな不都合から
こんな不自由から
それは本当なのに。
揺るぎ無い答えで
なんにも変わらないのに。
「好きなの…お前がどうしても」
君の大きな目がさらに見開いて
告白した日みたいだ。
だけどオレはね
あの日、楽屋で告げた時よりも
もっともっと強い気持ちで
君を離すべきだと思うほどに
君がどうしても愛しい。
君を想えば、
必要な選択ははっきりしてるのに。
「オレひろが好きすぎて」
「…」
「自分を消したくなる…」
初めは、
成就するとも思ってなかった。
そしてこんなに好きになるとは
思ってもみなかった。
だけど結局は自分の意志ひとつで
何とでもなると思っていた。
その痛みが深くなりそうと
気付いても、なお
自然な流れで
離れてゆけると思っていた。
そうして生きてゆくしか
ないんだって諦められた。
君と僕の生きていく路は
一緒じゃないんだから。
沢山の轍の痕。
向かうべき場所は
みんなそれぞれあるんだ。
共に生きてゆける人と
明日を見た方が幸せだよ。
それはきっと、
遠い未来でこれで良かったと
そう、思える日がやってくる。
やっとの思いでオレは
そこへたどり着いたのに。
「好き…ひろが好き…」
柔らかな熱に言葉が浚われる。
恋はいつ愛に変わったの?
蒼くん、と君が囁く。
「好き、も…解放されたい、も」
タバコとミントの香り。
熱いメンソールの息。
「解放してあげたい、も」
「…ひろ?」
「同じに聞こえる」
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