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察しはついているだろうが説明させていただきたい。
やはりこの恋は永くは続かなかった。
原因は学校内の質の悪い噂話による間接的暴力である。
その内容は酷いもので、まず朝一人の女子が泣きながらクラスの中に入っていく。
周りの女子たちがそれを慰めるようにしている。
そして他のクラスメイトたちが「どうしたの?」と尋ねてくる。
そこでその女子は声高に言うのだ。「川岸君を恵子にとられたの!!もうあたしどうしたらいいのかわからない……」
これを聞いた生徒諸君は詳しく聞きたがる。あとは手順通りガセネタを話せば噂話の元種が完成するのだ。
あとは元種が一人歩きするのをただ待てばいいだけ。なんのためにか?もちろん別れさせたいからだ。
先ほどの悲劇のヒロインを軽やかに演じきった彼女、西川歩(にしかわあゆむ)はこう語る。
「だってチョーウザイじゃん?なんで恵子が川岸君と付き合ってるわけ?あんな芋女より全然あたしのほうが綺麗でオシャレで賢くてお金持ちなのに!全然ワケわかんない!?って感じだったからやったワケ。噂が広まったときはチョーウケると思ったね。(笑))
これが現実である。
夢の中で永遠と愛し合っている彼らには厳しすぎるものである。
噂は噂を呼び、瞬く間に彼らの根も葉もない陰湿な噂が校内に流れていた。
もちろん付加された噂も多いだろう。
彼らが登校するとイタズラ半分の壁書き、靴箱のイタズラ、机、黒板の落書き、その他諸々。
友達も次第に離れて行き、先生にも呼び出されて説教を喰らった。何故か?まぁおいおい察しはつくだろう。ここでは控えたい。
もはや恵子が頼れるのは川岸だけである。「大丈夫。私には川岸君がいるもの。こんなイジメになんて負けないもの。」
恵子は最後まで川岸を信じた。
ある日の休日。恵子はいつも通り川岸の家に行った。
朝の8時30分。都内では珍しく霧が出ていて、ジトジトとした感じの湿気が恵子の体に気味の悪い感覚を与えていた。
春の中頃にしてはやけに肌寒い………
恵子はようやく川岸の家にたどり着いた。
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