始まり

2/15
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
平日のレストランの中で賑わう一角―― そこには男子4人の姿。会話に花を咲かせているようだ。もっとも、男が話をしていて花を咲かせている、というのかは疑問だが。 「ジュン、お前も何だかんだで上手くなったな。」 ジュン(坂下純一・さかしたじゅんいち)はお調子者でこのメンバーの中で149cmと最も身長が低い。 おかげで学年を1つ下と間違われてしまう。 「いやー、やっぱショウが上手いんだって。」 俺、ショウこと宇佐元翔也(うさもとしょうや)。バンドのリーダーでリードギター担当。ついでに作詞作曲、編曲も担当。 ちなみにジュンはベース担当で、身長に見合わないベースを抱えてる所為か、最初はふらふらしていた。 「…まあ、俺もショウに教わったからな。」 ガタイがよく、いかついクセにやや寡黙なゴッドこと五藤一夜(ごとうかずや)。ドラム担当で最初はまったくの素人。今では学園内にこいつに勝るドラマーはいない。ついでに言えば8ヶ月で20曲もできるくらい上手くなったのだから努力家だ。 「確かにショウは教え方上手いもんね。俺もまだまだ学ぶところがあるよ。」 その一言はキョウこと是島恭介(これしまきょうすけ)。このバンド内で一番の成績優良。担当はサイドギター。 「その分は勉強で教えてくれよ。」 「構わないって。」 「にしても中等部の頃からの付き合いで、ここまでになるとはな…。」 彼女とデート中で今はここにいないボーカルのエージこと松之浦英嗣(まつのうらえいじ)を含める5人組のバンド「Check Six(背後に気をつけろ)」。 このバンドを結成するきっかけは学園祭だった。 「中1の学園祭でカッコイイバンドがいて、それを目指してたらここまで来た、か。」 「結成1年目はやばかったな。まともに曲を練習せずに年明け前に解散危機。」 おどけたようにジュンが言う。 「くっくっく…。」 笑うゴッド。こいつは毎回こうやって笑う。 「んで2年の夏に俺んちで合宿なんかしてな。お前らが枕投げなんてすっから、窓ガラスが割れたんだぜ?」 「はははは!あったな~。そういうこと。」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!