30645人が本棚に入れています
本棚に追加
伊勢の口から「赤い人」なんて言葉が出てくるなんて、思いもよらなかった。
怪談話は嫌いじゃない。
むしろ、テレビの特番で、ホラー特集なんかがあると、録画までする程好きだ。
だけど、「赤い人」なんて、誰かが面白半分で広めた噂だと思う。
大方、先生達が、用事もないのにいつまでも残るなって意味を込めて、作った怪談じゃないの?
そんな事を考えながら教室を出て、階段の方に向かって歩いていた時、私の目にそれは映った。
生産棟の一番奥の廊下……そこを横切る大柄な生徒。
あれは、伊勢?
まだ「明日香」って人を探してるんだ。
誰だかわからないけど、あそこまで必死に探してもらえる「明日香」って人は、幸せだな。
きっと、私なんて……いなくなっても、誰も探してくれないと思うから。
フウッと、溜め息を吐き、階段に視線を移そうとした時だった。
「えっ?」
視界の端に映った妙な人影。
伊勢が駆け抜けて行った、生産棟の一番奥の廊下に……高校には似つかわしくない、小学生くらいの少女がこちらに向かって歩いて来ていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!