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案外短い人生だったと思う。
楽しいことは、無かった。
嬉しいことも、無かった。
苦しいと感じてしまうことは沢山あった。
嫌だと思ってしまうことも沢山あった。
思い出に残るようなことは何一つ無い人生だった。
それでも、死ぬことだけはしなかったのは父がいたからだ。
自分で死ねる環境じゃ無かったのもあるけれど、父の役に立ちたかったから。
ただ、それだけの為に生きていたのだと思い至る。
父の顔さえ知らないし、殺したいほど憎まれていることを知っている。
けれどそれは、私という存在が父の大事なものを奪ってしまったからだと知っているから。
憎いとは、思わなかった。
其が、不条理だとも思わなかった。
父に赦して貰えるように
父が笑っていられるように
それだけが、私の生きる意味だった。
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