80人が本棚に入れています
本棚に追加
赤く染まった部屋の真ん中で倒れた娘を、モニター越しにじっと見ていた。
最後に動いた娘の口は『ありがとう』と言っていた。
「………ッ!」
憎かった
憎かった
大切なものを奪っていった娘が、殺してしまいたいほどに憎かった。
「…クッ……ウッ」
愛していた
愛していた
大切なものが残していった娘を、全てと引き換えにしても構わないぐらい愛していた。
相対する二つの感情は、どちらも嘘なんかじゃなかった。
どうすることも出来なかった。
どうすることもしなかった。
見たこともない光に包まれてだんだん薄れていく娘の姿に『生きろ』と言ったのは、自分のエゴだった。
優しい言葉をかけてやれなくてごめん。
守ってやれなくてごめん。
苦しませて、大切なモノを奪ってごめん。
でも、それでも
「じゃあな……。」
愛してた。
最初のコメントを投稿しよう!