80人が本棚に入れています
本棚に追加
天気、晴れ。
時刻は夕暮れ。
橙から深い藍色へと移り変わっていく空を見ながら目的地へと続く階段を登る。
片手には団子、後ろにはそこそこ仲がいい仕事仲間がいて、足も気分も次第に浮き足立つ。
「総司、危ないぞ」
「平気ですよ。一君は心配しすぎなんです」
子供じゃないんですからと、後ろから掛けられる言葉を軽く流して、階段を一段飛ばしで登っていく。
まったくアイツは…、と後ろで呟かれた言葉は聞こえなかったことにした。
階段を登っていっても、目的の場所からは何時もの賑やかな子供たちの声が聞こえない。
「静かですねぇ」
「もう遅いからな。きっと帰っていったのだろう」
「もう暗くなって来ましたもんね」
少し遊べるかもと思ったんですけど、と呟いた声は少し沈んだように聞こえた一は、また来ればいい、次はもっと早い時間に、と総司に言った。
それを聞いた総司は後ろに居る一を勢いよく振り返り、一拍置いたあとに破顔した。
「その時は付き合ってくださいね」
その上機嫌で返ってきた返事に、まるで子供のようだと心の中で苦笑しながら、暇だったらな、と答えた。
最初のコメントを投稿しよう!