80人が本棚に入れています
本棚に追加
カシャン……
何時もの浅い眠りは、小さな金属音に邪魔されて目が覚めた。
寝起きで重い身体を起こしながら辺りを見渡しても、
異変は何処にも無いからさっきの音は気のせいだったのだろう。
(あの夢、久しぶりだった…)
顔に落ちてくる長い髪を雑に払いながら、ボンヤリとさっきの夢を思い出す。
あれは、幼い頃に大切だった人と交わした約束の夢。
何時か一緒に空を見ようと、指切りげんまんをして、約束をした時の。
その約束はもう何年も前に交わしたもので。
思い出したのは、久しぶりだった。
覚えている意味が無くなっていたから。
あの日交わした約束は、もう二度と果たせなくなった。
指切りげんまんをしたのに。
約束を交わした人が、いなくなってしまったから。
会うことも
話すことも
出来ない。
手の届かない
声の届かない
遠い遠い場所にいってしまった人。
自分に、優しく接してくれた人。
最初のコメントを投稿しよう!