―プロローグ―

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 事件は一つの地域で起こったため、警察はこの犯行を同一人物として捜査をしている。 「気を失うまでの話しをします」  茂田はそっと目を閉じ、記憶を鮮明に思い浮かべた。 「サークル仲間との飲み会の帰りでした。陸橋の階段を上がりきって、真ん中らへんまで来たところで 、右肩に激痛が走りました。振り向くとそこには、覆面を被った男が立っていました」 「覆面を被っていたのに、男だと判断できたのか?」 「体格からして男だと思います。その男は振り向いた俺の太股に二回ナイフを刺しました」 「ナイフ……包丁とかそういうのか?」 「いえ。あれは果物ナイフだと思います」  今井は被害者の傷からナイフのようなものと判断できる、と検察官から聴いていた。 「そのあとは記憶を失ってしまって、気付いたら病院でした」 「犯人に心当たりは」 「……ないです」 「そうですか……」 「すいません」 「いや、謝ることはないんだ。必ず犯人は捕える。もうこれ以上被害者を増やしたくないからな。もし何か他に、思い出すようなことがあったら教えてくれ」 「わかりました」 「じゃあ、事件の次の日だってこともあるし、今日は失礼するよ」 「お大事に」 「はい……」  二人は茂田に背中を見せた。 「待ってください!」  二人が病室を後にしようと、背を向けた刹那、茂田が声を張り上げて二人の後ろ髪を引いた。 「ん?」  黒田は踵をかえし、茂田に再び視線を向けた。 「俺は……生きてるんですかね?」
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