1 蓮台野より

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 2時05分。本を読みながら、ふと悟った。殆ど完成された秩序の中ではこれが限界だと。  学び、やがて働く。遊ぶ。飲む。スナック菓子の残りカス程度に余った自分の時間幾何、趣味に時間を費やせば瞬きする間に時が経つ。こんなルーティングをこの先何十年?考えただけで老けそうだ。  老いて死ぬまで好奇心を擽られるような日々を送るのは到底叶わぬ夢。法の下で生きる他に道はなし。盗めば捕まり、働かねばそのうちのたれ死ぬ。我を貫けば、見返りは必ず自分に降り掛かるのだ。  何処からか鳴き声。本を閉じ、窓の外に視線をやる。闇夜に浮かぶ二つの眼。ゆっくりと、それは近づいてくる。 「ニャア」  やがて野良猫と目が合った。  彼らも明日を生きる為に必死だろうが、それすら私には羨ましく、疎ましく思える。  私も猫のように何者にも縛られぬ日々を送ってみたいものだ、と。  何度も言うが、そんな生活、到底叶わぬ夢物語。  ……それが、どうやらそうでもないらしい。  それに関してだが、今しがた私の耳に興味深い話が舞い込んできたのだ。ひょっとすれば、この世界から抜け出ることも叶うかも分からんようなユーモア溢れる話だ。  ソイツについて、ゆるりと時間をかけて話したいところだが、生憎だな。私はこれから出掛けるのだ。悪いが失礼する。  ……こんな深夜に何処へ行く、と聞きたそうな顔をしているな。  何、野暮用だよ。少しばかり、知人の酔狂に付き合ってやるのさ。
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