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「だったら・・・何の話なんですか?」
尋ねる俺の顔をニヤリとした笑みを浮かべてエロ魔神は一瞥した後、俺に信じられない言葉を告げた。
「業績が確実に低迷する中。
私達の会社もリストラを行う事に事になった。
手始めに現場のパートと派遣を全部切る事に決まったから。
栗山君もそのつもりで」
俺は・・・
こんな大切で、しかもリストラ当事者にとっては何より大変な出来事を、他人事の様にニヤニヤした面で告げた、このクソ野郎の面を忘れる事は無いだろう。
右手の拳をギュッと握り締め、ぶん殴りたい衝動を必死で堪える。
「部長~ッ。
栗山君と二人きりで何をお話してるんですかぁ~?」
不意に喫煙室に入って来た井坂某の声に、クソ野郎の面はますますニヤケ度が増して行く。
「おお~。井坂ちゃん。
隣に座りなよッ?」
「はぁい」
とクソウザイ甘ったれた声で、井坂某はクソ野郎に答えると隣に腰掛けた。
「今。こないだ話したリストラについて栗山君に話してたんだ」
「ああ。
まぁ・・・しょうが無い事ですもんね。
正社員じゃ無いし」
とクソ野郎と井坂某は明日の天気を話す様に、さも当たり前の様に話している。
「しょうが無いって・・・
それは違うだろ?」
俺は怒りを抑えつつ井坂某に告げるが、大して気にした様子は見受けられない。
「栗山君に、この話を現場の人間の中で真っ先に伝えたのは、それだけ部長が期待してるからだよ」
こいつらは別の生物か何かなのだろう・・・
俺は自分を落ち着かせる様に、深呼吸を行った後。
「部長・・・
それが確定事項ならば、早く皆に知らせるべきでしょうね。
俺は工場長に伝えておきます」
俺は吐き捨てるかの様にクソ野郎に告げると、喫煙室から出て行った。
務めてドアを静かに閉めたのは、俺の怒りを暴発させない様にである。
「井坂ちゃん。今日の夜は空いてるかい?」
「今日はぁ~。暇かどうかは部長次第ですよぉ」
俺が去ると、クソ野郎と井坂某のやり取りが始まっていた。
俺が良太や美紗の元に戻りながら考える事は、派遣社員として入社したての美砂の事だった。
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