【ハードボイルドDAYS】

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急いで車を停め、何気ない素振りで入り口の自動ドアをくぐる。 良い男はこんな時でもクールでなくてはならないのだ。 それに加えて現在の状況で走るなどという愚行は死に直結しかねない。 俺は片手を軽く上げ、爽やかな笑顔でカウンターの女性に一声かける。 「トイレ借りるぜ」 なかなかの美人だが今はそれどころではない。 「あ……今、他のお客さまが入ってますよ」 なんだとう!? この世には神も仏も無いのか! とにかく今は一刻を争うのだ。 雑誌コーナーの奥にあるトイレに目線をやると、丁度ドアが開いて中年の女性が出てきた。 ナイスタイミングだ! 神は俺を見棄ててはいなかった! 慎重にトイレへと足を運ぶ。 すると、今まで座って雑誌を読んでいた若者が立ち上がり、雑誌を棚に戻した。 まさか…… まさか……やめてくれ! 神よ! 今だけは…… バタン! 無情にも楽園の扉は若者を招き入れて閉じられた。 これはヤバイ。 例えるならカウントダウンの始まった時限爆弾で無邪気なお猿さんにキャッチボールをやらせるぐらいヤバイ。
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