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「真面目だなお前。」
ホストは私の格好を見て少しだけ戸惑っているのか、頭をかきながら私に近寄ってくる。
私は後退りしそうになる足をしっかりと止めた。
本当は逃げ出したい。
本当はしたくない…
「選択肢があったら、お前は今を続けるのと、神様の言葉に従うのはどっちがいい?」
へっ…?
今なんて言った…?
「選ぶのはお前だぞ。今を続けるか、神に従うか。」
ホストは本気で言ってる。
私を見て言ってくれてる。
もちろん、まだ信用したわけじゃない。
でも今の私には、そのホストの言葉が本当に神様からの御告げに聞こえたんだ。
安心…?
そうなのかな…
なにこの感情…
なんだろう…なんでこんなにも嬉しい気持ちになるんだろう…
体の奥からあふれ出す熱いものはなんだろう…
止まらない。
どんどん視界が無くなってく。
「今は何も言わなくていいよ。逃げるぞ。今すぐ着替えろ。」
ホストはニコっと笑って私を見る。
頭を優しく撫でると、入り口の方を向いて腕を組んだ。
「うっ…うぅ…」
涙はまだ止まらない。
でも少しだけ、ほんの一瞬だけど私は…女になれた気がした。
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