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「あ、ああ。」 聖人と呼ばれる男の子は慌てて顔を赤らめる。 「アハハ! 何よ、聖人! 全然いつものあんたらしくないじゃん! 顔赤くしちゃって、慌てちゃって~。」 「ななちゃん、コイツいつもはねぇ…。」 ニヤニヤしながらそこまで真琴が言いかけると 「ムグッ…」 聖人が後から大きな掌で真琴の口を塞いだ。 そして真琴の口を塞いだままズルズルと真琴を引きずって行ってしまった。 顔を真っ赤にして。 口を塞がれ、後ろ向きに引きずられたまま、真琴はヒラヒラとななに手をふっていた。 私は何がなんだかよくわからずに、ポカンとその場にしばらく立ち尽くしていた。 だいぶ陽が短くなって、駅に斜めに差し込むオレンジ色の光が、聖人が隠れていた柱に長い影を作っていた。
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