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そこにいたのは見覚えのあるグレーのブレザーを着崩したガラの悪そうな男があたしを不機嫌そうに見下ろしているではないか。
あたしは呆然と見上げるまま。この距離だと男の顔が良く見えない。あたしより相当背が高いのだろう。
そしてあたしに何の用かと不思議に思い、小さく首を傾げてみせた。
「それ、俺の。」
男は顎でクイクイッと寄りかかっていた原付のバイクを指している。
…あ、バイクか。
あたしはそれに気付き慌ててバイクから立ち上がると少し離れたところに移動した。
「ごめんなさい。」
と謝りながら。
「なに、迷子?」
男はバイクの鍵を取り出してあたしに問いかけてくる。しかも少しバカにしている様子。
「あ、や……まぁ。」
少し恥ずかしくなってしまったあたしは俯いた。良いから早くどっか行ってくれよと思いながらも男は再び口を開く。
「その制服、桜女子高等だろ?俺の高校の近くだしめんどくせぇから送ってやるよ。」
あたしの行く高校から近いのか……ってなんか見覚えがあると思ったら桜女子のすぐ裏にある桜男子高等学校の制服だ!
いや、でも送ってもらうわけにはいかないと思い
「え…や、送る方が面倒だと思うけど…。じゃなくて大丈夫です!一人で行けますから!」
と首を振りながら答えた。でも男は無理矢理と言って良い程、乱暴な口調て言い返してくる。
「遅刻だろ!早くしろよ。」
仕方なくあたしは渋々と男のバイクへと跨がり両手は男のブレザーの裾をそっと握る。
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