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「ちゃんと捕まってろよ?落ちても拾わねーぞ。」
…いや、落とさないで。
そんな乱暴な言葉に知らない男の後ろに乗って良かったのかと思いつつ急発進したバイクにあたしは後ろへとよろけそうになって。
…危なっ!一言、行くよとか言ってよね。本当何もかも乱暴な人!
心の中でそう呟いていたのも束の間。
バイクのスピードはどんどん上がって行く。
次第に体を叩きつけるような風が強くなっていきあたしは本当に落ちるのではないかと思わず男の腰を抱き締めるような形に。
大きな背中に頬が何度か当たりつつも風と共に運ばれてきた男の香水の匂いが鼻をくすぐる。
…良い香り。落ち着く。
あたしは目を瞑りながら背中の温もりを感じていた。なんだか眠れそうだと、うとうとしていたら
「着くぞ。」
前からする低い声があたしを呼び覚ました。目を開け辺りを見渡せばひらひらと散っていく桜の花弁。
桜並木を通っているのだろう。かなり幻想的な景色。バイクはこんなに良いものなのかと初めてそう思った。
「着いたぞ。」
バイクが止まった事を確認した後にあたしはゆっくりと降りる。
あと少し歩いたところに学校が見える。なぜ、こんな微妙に離れた場所に止めたのかと疑問に思っていたのだか、あまり気にせず、お礼を言おうと改めて男の顔を見た。
………え?
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