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一週間、そんな夜が続いている。
呪われた蝶の絵。自分でもアホらしいと思う。
春になると精神の不安定な人が多くなる理由は、ホルモンのバランスが崩れるから、と聞いたことがある。私の今の状況も、オカルトではなく精神科医の領域なのだろうか。
陽はすでに沈んで、手足に寒気が忍び寄る。残業で疲れているというのに、帰宅するのが憂鬱で足取りは重い。特に気に入っている物でもないし、蝶の絵を捨ててしまおうか。
もったいないけど……そんな風に気持ちが揺れていた時だった。
あ、あれは私が持つのと同じ、蝶の絵!?
私の行く手、数メートル先に軒を構える店。客が扉を半開きにして、店内にいる誰かと一言、二言しゃべりながら振り返り、立ち止まっている。
扉の隙間から見える、その店の壁に。青い蝶の片翅の絵が飾ってある。
青い蝶の右翅だけの絵……!
私がよく確かめようと走り寄ると同時に、客が去って扉は閉まり、蝶の絵は見えなくなった。私は高鳴る鼓動を抑えつつ、店の前に立つ。
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