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でもクレーム・ド・カカオの茶が白にゆっくり溶け出し混じり始めて、黄色に見える。赤、緑、黄のクリスマス・カラー。
「都会のバーなら、こういったケバケバしい、孔雀カクテルが受けるかもしれん。だが、この店では不要だ」
「では、どういった物なら良いのですか」
オーナーの言葉に少なからず傷つき、僕の語気が荒くなる。
「もっと頭を使え。客の気持ちになって、酒を作るんだよ」
ひらひらと手を振りオーナーは立ち上がって
「冬限定でなら、このカクテルも悪くないかもな。その黒髪ネコ毛を梳かし直して、もうちょい風通しを良くしてから、レシピも練り直せ」
憎たらしく付け加え扉へ向かう。
「僕の髪型は関係ないでしょ……オーナー、そろそろ開店時刻ですよ。どこへ!?」
「野暮用、野暮用。社会勉強」
追いすがるのも間に合わず、長い上着を翻したオーナーは外へ逃亡してしまった。社会勉強って、つまり遊びに行くってことか。いつものことだが。
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