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「どうしてですか?」
閉店作業を無言で終らせ、僕はとうとう耐え切れずに、オーナーに問いかけた。
「頭を使え客の気持ちになれと、俺は夕方に言ったばかりだと思うが」
「わかりません。教えて下さい。どうしてアイリッシュ・コーヒーでは駄目だったのか」
椅子に座り、欠伸をしたオーナーは心底眠たげな様子で目をこする。
「どう見てもあの客、仕事帰りだっただろ。疲れた顔して」
「そう、だったかもしれません」
「こんな夜更けに仕事が終り一、二杯だけ酒を楽しんだら、家に帰ってシャワー浴びて寝るつもり。コーヒーなんか飲んじまったら、眠れない可能性があるだろう」
「あ……」
そんなこと微塵も考えなかった。
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