カラフル・カクテル

8/9
前へ
/20ページ
次へ
数日後。 僕は考案し直したプース・カフェを、オーナーに味見して欲しいと頼んだ。下から順に赤、緑、茶に白。重なった四色のカクテル。 「見た目は別に、変わらんようだが」 「はい。ここからが少し違います」 僕はマッチを擦る。燃える燐のツンとする匂い。カクテルの表面に青い炎を近づけた。 一番上に薄く注ぎ入れた、白のウォッカ一面に青い火が灯り。僕たちの顔を照らしてグラスの上部は明るく輝く。 ウォッカの表面にクリームで描いてあるハート。その部分には火が灯らず、ハート型がくり抜いたように。瞳に映し出される。 「ほう。何だか良い香りがするな?」 「菓子に使われるカソナード……赤砂糖をグラスの淵につけてあります。この砂糖は熱を加えると、ラム酒のような香りがするのです」 「視界と鼻で楽しめるカクテルか。ふーん。お前、派手好みのこのスタイルを変える気はねえんだな」 「はい」 人が何と言おうと。僕は派手な程の、カラフルなカクテルが好きなのだ。 「こだわりも、ここまでやれば面白い。冬季限定でメニューに加えよう」 「ありがとうございます!」 心の中で小躍りする僕に、灯りが消えたカクテルをストローでずずっと啜るオーナーは、ただな、と顔をしかめた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加