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数日後。
僕は考案し直したプース・カフェを、オーナーに味見して欲しいと頼んだ。下から順に赤、緑、茶に白。重なった四色のカクテル。
「見た目は別に、変わらんようだが」
「はい。ここからが少し違います」
僕はマッチを擦る。燃える燐のツンとする匂い。カクテルの表面に青い炎を近づけた。
一番上に薄く注ぎ入れた、白のウォッカ一面に青い火が灯り。僕たちの顔を照らしてグラスの上部は明るく輝く。
ウォッカの表面にクリームで描いてあるハート。その部分には火が灯らず、ハート型がくり抜いたように。瞳に映し出される。
「ほう。何だか良い香りがするな?」
「菓子に使われるカソナード……赤砂糖をグラスの淵につけてあります。この砂糖は熱を加えると、ラム酒のような香りがするのです」
「視界と鼻で楽しめるカクテルか。ふーん。お前、派手好みのこのスタイルを変える気はねえんだな」
「はい」
人が何と言おうと。僕は派手な程の、カラフルなカクテルが好きなのだ。
「こだわりも、ここまでやれば面白い。冬季限定でメニューに加えよう」
「ありがとうございます!」
心の中で小躍りする僕に、灯りが消えたカクテルをストローでずずっと啜るオーナーは、ただな、と顔をしかめた。
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