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「殺されたんですか?」
石田は大岩の言葉が終わるのを待って、そう聞いた。
「なぜそう思われるんですか?」
「いや、こうやって来てるから」
石田は鼻で笑うように言った。
大岩は、「まだわからない」と笑って答えたが、こちらを見て困った顔をしてみせた。
「安田さんと最後に会ったのはいつでしたか」
大岩がペンを構えて聞く。
石田はそうですね・・・と言葉を選ぼうとして、隣の部屋から出てきた息子を目で追った。
「ん」
母親の後ろを通り過ぎ、こちらに真っ直ぐ向かってきた子どもの手にはアンパンマンの絵がついたラッパがあった。
それをこちらに差し出す。
石田と大岩がクスクス笑い出した。
「この子が懐くなんて珍しいですよ。今、人見知りなんです」
そんなことは知ったこっちゃないが、気に入られているのは確かだとわかる。
また、おもちゃを黙って受け取ると、満足したのかまた隣の部屋に戻っていった。
「会ったのは4ヶ月前かな。飲み会で。2ヶ月くらい前にメールしたけど、会ってはいないです」
「メールはどういう?」
「飲み会やろうって誘ってたんです。毎月やってたから、前の飲み会の後から何度も誘ってたんですよ」
それまで毎月やっていた飲み会だったが、4ヶ月前を境に「予算がない」と断られ続けていたのだという。
最後にメールしたときも同じように断れたから、またかというと「農家は給料制じゃないから、そんなこと言われても困る」といわれたとか。
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