19人が本棚に入れています
本棚に追加
「他の友達よりは、なんでも言える人でしたよ。だから、好きだったです」
「そう、ですか」
大岩がこちらを見た。
「長居をしてしまいました。これで失礼させていただきます」
立ち上がって頭を下げると、大岩も慌てて礼をして「またお話を・・・」と、何度目かの言葉を口にしていた。
それを聞いてから玄関に向かう。
石田は随分急だというようにしていたが、反面、帰るということに安心しているようにも見えた。
そういえば子どもは、と思って、玄関に向かう短い距離の一瞬、隣の部屋をのぞいて立ち止まる。
大岩は急に立ち止まったことに、驚いて「どうしたんすか?」と聞いたが、目線の先を見て「あぁ」と笑った。
子どもは部屋の中で眠っていた。
床に横になり、寝返りを打っている。
きっと、遊んでいてそのまま寝てしまったんだろう。
寝ている周りにおもちゃが幾つか転がっている。
「お邪魔しました」
そう言って玄関を出ると、もう外は暗くなっていた。
街灯の少ないところだが、家の窓から漏れる灯りでぼんやりと最低限の明るさは確保している。
「大岩、もう一軒行くぞ」
そう言ってすぐに車に乗り込んだ。
助手席に乗った大岩が、関係者の住所や仕事先の書かれた用紙をポケットから取り出して見る。
「あぁ、最後の一軒っすね」
大岩の言葉を聞きながら、車を走らせる。
ここから車で20分くらいの場所、母親の証言にあった安田瑞希の友人がいる。
最初のコメントを投稿しよう!