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朝、少し遅れて職場に着くと大岩が待ち構えていた。
「今日は、どうするんすか?」
何やら少し偉そうだ。
遅刻したことが原因だろうか。
「昨日の、あれなんて言ったっけ?滝田?あの女から聞いた奴ら」
「秋川と鎌田ですね」
わかっていた、と言わんばかりに大岩は紙をチラつかせる。
秋川と鎌田の個人情報が印刷されているらしい。
それを用意したということは、今日そこに行くことが予想できていたということだろう。
腹立たしさを覚えないわけでもないが、ここは大人としてグッとこらえて車に向かう。
何も言わずとも、大岩はすぐに後を追ってついてきた。
「運転は俺が」と言うので、助手席に乗り込み、シートベルトをした。
先に向かうのは鎌田美夏という、安田瑞希の中学の同級生のところらしい。
安田瑞希の母親以外からも、安田瑞希と親しくしていた人間のことを聞いていた。
飯塚、依田、今川、石田からは、母親の口から聞いた名前しか聞くことができなかったが、最後に訪ねた滝田から、中学の頃の同級生と担任教師の名前が出てきたのだった。
住宅地の中の、細い道路で車は止まった。
一軒の家の前だ。
道は狭く、路肩に止めると通行の邪魔になったが、生憎他に止められそうなところは近辺にない。
車を降りて玄関に立つと、何もしないのに玄関の戸が開いて小さな女性が出てきた。
互いに予想外のことに驚いてしまったが、こちらの事情を話すと家の中に通された。
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