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女性は薄々予想はできていたが、鎌田美夏の母親だった。
こけしのような顔をして、女性らしいフリフリとしたデザインの服を着ている。
一見若そうに見えたが、よく見ると50代くらいだとわかる。
それがわかると、急にその服装に違和感を感じた。
玄関からすぐ階段を上がってリビングに通される。
生活感に溢れているというかなんというか、家の中は本やら何かの書類らしい紙類が山積みになっていて狭苦しい。
狭いリビングの中にドンと置かれた食卓テーブルに座ると、母親はすぐに隣の部屋にいた娘を連れてきた。
安田瑞希とはだいぶかけ離れたイメージの鎌田美夏に、大岩が小声で「えっ」と声を洩らす。
適当な挨拶をし、目の前に座る親子に大岩が話を切り出す。
肌の色の浅黒さは母親譲りだろうか。
親子だから雰囲気は似ているようだが、娘のほうからは何か危うい感じがする。
大岩が安田瑞希のことを話すと、おおげさなほどの反応をした。
大岩が質問をしようとするのに、それどころじゃないように鎌田美夏は母親に何か話しかける。
大岩はそのたびに話を中断させられた。
母親がやんわりと娘を諭し、やっと大岩が質問を許される。
ハキハキと答える鎌田美夏は、どうやらしばらく安田瑞希に会っていないらしい。
もうかれこれ2年以上だという。
最近連絡をとったのは、年賀状くらいだったというのだから付き合いもさほどなかったのだろう。
中学校の同級生で、高校は違ったが毎朝同じ電車で通学していたという。
「大学も一緒だったんですけど・・・あ!あたしは一浪で瑞希さんの後輩だったんですけど」
「あぁそうですか・・・」と、大岩は引き気味の返答をする。
喋り方も、見た目同様に切迫感がある。
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