第一章~別れ、そして旅立ち~

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タッタッタッタッ……! 矢がかわされたのを確認するや否や、今度は右から斧を持ったゴブリンが馬に乗って接近してきた。 右手に持った斧を高く振り上げ、徐々に距離を詰めてくる。 男は一度馬を止めると、走ってくる敵の方向に向き直る。 姿勢を低くし、長剣に手を当て、もっとも緊張が高まる瞬間を待つ。 タッタッタッタッ……。 今まさにこちらへ向かって来る一匹の敵、地面に落ちる雨の雫、身体に吹き付ける冷たい夜風。すべての物体がまるでスローモーションのように、それらが本来持つであろう速度を失う。 周りを取り巻く時間の流れがいつもより遅く感じられた。 タッタッタッ……。 まるで何かの終わりを告げるカウントダウンのように。迫り来る敵の足音だけがゆっくりと胸の奥にこだまする。 しかし、焦る事なくただじっとその時を待つ。 (…………今だ……!) 声には出さない。 しかし、彼の無言の合図と共に馬は勢いよく地面を蹴る。 カッ…………!
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