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タッタッタッタッ……!
矢がかわされたのを確認するや否や、今度は右から斧を持ったゴブリンが馬に乗って接近してきた。
右手に持った斧を高く振り上げ、徐々に距離を詰めてくる。
男は一度馬を止めると、走ってくる敵の方向に向き直る。
姿勢を低くし、長剣に手を当て、もっとも緊張が高まる瞬間を待つ。
タッタッタッタッ……。
今まさにこちらへ向かって来る一匹の敵、地面に落ちる雨の雫、身体に吹き付ける冷たい夜風。すべての物体がまるでスローモーションのように、それらが本来持つであろう速度を失う。
周りを取り巻く時間の流れがいつもより遅く感じられた。
タッタッタッ……。
まるで何かの終わりを告げるカウントダウンのように。迫り来る敵の足音だけがゆっくりと胸の奥にこだまする。
しかし、焦る事なくただじっとその時を待つ。
(…………今だ……!)
声には出さない。
しかし、彼の無言の合図と共に馬は勢いよく地面を蹴る。
カッ…………!
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