虐待。

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兄とは小さい頃はとても仲が良かった。 それも、気持ち悪い程… 母親に、近親相姦を疑われていたくらい… 実際、私はあまり記憶に無いのだけれど、 うっすらと、とても曖昧に覚えている事も、無くは無いのだ。 例えば寝ている時、 同じベッドで一緒に寝ていると、必ず手を繋いで寝ていた。 そうしないと、安心して眠れないのだ… 私達は、枕の位置を反対にして寝かされた。 とても落ち着かなかった。 右手が空いている事に耐えられなかった。 右を向いても、兄がいない。 眠れない… 兄が、足の裏をくっ付けて、私の足の裏と合わせて来た。 自分の足の裏から、兄の体温が伝わって来てとても暖かい… 心が落ち着く… 不思議と、安心出来た。 私は、やっと眠れた… 私達は、二段ベッドで寝る事になった。 私が上で、兄が下だった。 暫くは、上をおもちゃ箱として使い、 2人で、下で一緒に寝ていた。 私達は、上と下で、別々に寝る事になった。 もはや分かり切っていた事だが、 落ち着かなかった。 右手は空いているし、 寝返りを打っても、隣に兄がいない… 寂しかった。 落ち着かなかった。 心細かった。 泣きそうになっていると、不意に、安心する声が話しかけてきた。 私の名を呼び、まだ起きてるかと訊ねて来た。 私は、その声を聞くと、自然と安心できた。 さっきまでの寂しさや、心細さ、色々あった不安が、一気に吹っ飛んだ… 私はその声の主に 起きてるよと伝えた。 声の主も、心なしか安心したようだった。 私達はそのやり取りを何度か繰り返し、 そして、 やっと眠りに就いた… そんな事を続けていたある夜、 母に、うるさい。いつまで起きているの。 と叱られた。 私達は、いつものやり取りの代わりに、 お揃いで色違いの熊のぬいぐるみに、紐を括り付けて、 兄が2回ぬいぐるみを引っ張る。 下のベッドのぬいぐるみから、1本の紐を通じて、私のぬいぐるみが2回引っ張られる。 私は自分のぬいぐるみを、同じように2回引っ張る。 声を出さずに、起きているかの確認だ。 そんな、 今冷静になってから考えてみると、 恥ずかしさのあまり自らの舌を全力で噛み千切ってしまいたくなる衝動に駆られるような事を、 当たり前のように毎晩平気でやっていた事もあった。
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