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アリアの家に向かっているのだが、川から現在までの会話は無く、切り出そうとはしているのだが、どうにも間がとれない。話をしなければならない――そんな決まりなど無いが、どうにも無言というのはテウスの焦燥感を煽った。
そんな彼に救いの手を差し伸べたのは、もちろん、アリアだった。
「着いたよ」
「あ」
アリアが指差したのはなんの変哲も無い、灰色の石が混じった黄土色の四角い家。この周囲を見回しても似たようなものばかりで、これと言った個性はない――というより、この国すべての建物が、似たような形だ。
ただし、一つを除外して、だが。
それには理由があった――と言ってもこの国『フォールス』に住んでいる人なら、おそらく誰もが知っていることだ。テウスはこの国で一番――というより、唯一目立つ建物に視線を放った。
その先には円柱の形をした塔がある。壁の材料こそ周囲の家と同じ。しかし、目を張るべきはその高さを誇り、まるで天からぶら下がっているかのように見える。ここからでは見えないが、その周りを囲むようにして点在する建物たちもそれに沿うようにして高いが、決して同じ高さではない。
周りの建物は首都『サリーナ』――ひいてはこの国の中心だ。そして、中心というのは二つの意味を指す。そのままの意味と、『心臓』もしくは『頭』という意味で。
前者は、この国の作りのせいだ。上空から見下ろせば、黄土色の円内のちょうど中心につきささっているようになっているらしい。
そして後者。行政を代表とし、死者が初めに訪れる『閻魔』などが一帯にひしめきあっている。たいてい『閻魔』のある場所は初めて来た死者をこの世界に慣らすために多額の公共投資をした便利な施設が揃っているので自然と人が集まる場所で、国の首都であることが多い。だからこそ『閻魔』の発見は必然的に多くの人を保護して人口を増やすことが出来るので、発見者は国から多大なる特権を得ることが出来る。
だが、今重要なのはそれではない。それは後者。
大事なのはその一番高い塔にいる人のことだ。
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