5人が本棚に入れています
本棚に追加
ヘタレだと思う僕だって何度も恋はした。
その度に駆け引きは上手くなってる。
だけど言いたい事も言えないこの胸のむず痒さに手が届かない。
「はぁ…」
そして、またため息。
「どうしたの?マツバさん。」
「ううん。何でもない。ハヤト君には関係無いよ。」
困った顔見たくて、ちょっと意地悪言ってみた。
案の定、困った顔をした。
うん。
可愛い。
「冗談。本当に何でもないから。ハヤト君の困った顔見たくてね。」
「もう知りません。」
ぷい、とそっぽ向いてしまった。
その顔も可愛い。
違う。
どの顔が可愛い、とかそんな話じゃなくて全てが可愛いんだ。
可愛くて愛しい。
「怒らないでよ~。ほら、笑って?」
と、目を見ながら笑いかけてやると彼もニコッと笑う。
あ、片方だけ笑窪が出来てる。
「ハヤト君はやっぱり可愛いね。」
「何恥ずかしい事言ってるんですか……。」
ギュッと、彼から抱き付いてきた。
そっと彼の顔の縁を撫でてやり顎を掴んで目を合わせた。
「今、凄いキスしたくなった。しても良い?」
優しく微笑みながら彼に問いかけると、彼は恥ずかしがりながら小さく頷いた。
そして、優しく唇を重ねた。
何度も角度を変えて愛を確認する様なキスを、何回も。
彼の全部が好き。
ピンクの綺麗な唇も、石鹸の匂いがするちょっとギシギシする髪も、今、抱き締めてる少し低いこの温度も、全部。
彼の好きな所は他の奴より知っているつもり。
たけど、やっぱり言葉に出来ない。
.
最初のコメントを投稿しよう!