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突然、着信音が鳴り響き、私は現実に引き戻される。
「あ、ごめんな。妻からだ。今日はもう帰らなきゃ。いつも申し訳ない」
お金は払っとくからね、と伝票を持ち、立ち上がるあの人。
もっともっと話していたかった。引き留めたかった。でも。
「とんでもないです。こちらこそいつもありがとうございます」
しっかりあの人の方を見て答えた。
それなのに、あの人はもう私のことなんて見ていない。
電話口で、今店にいるから出たら折り返すよと言っているようだ。
去り際あの人は、私の目は見てくれない。私の気持ちを見ようとしてくれない。
いつだってそうだ。
私は冷めてしまった紅茶に口をつける。
渋い。
思わず顔をしかめる。
もう会うのはやめよう。
何度目かわからない誓いを立てて、私は一気に紅茶を飲み干した。
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