花見酒

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垂直に切り立った崖を駆け降りる水が、岩に、大気に、張り出した桜の枝に砕けて散り散りになり、辺りに降ってくる。その水飛沫が、一人の剣士の頬を濡らす。 その剣士は、自身の刀が水に曝されないように、今一度巻き布を締めつけてから、その瀧壺に足を踏み入れる。布に巻かれながらもその鞘は、一緒に下げられた一升徳利と当たり、軽い音を響かせた。 その纏められていない髪が濡れて肌に張り付くのも構わず、剣士は顔を上げる。細かく砕けた水の欠片と淡い花びらの残滓が、彼女に容赦なく降り注ぐ。
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