花見酒

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剣士は招かれた者の礼儀として、まずはそれを呑み乾した。そして、酒を閉じ込めていた上等な檜に、酒を豪快に降りかけて、返礼として瀧壺に投げ入れた。瀧はそれを味わうように転がして、そして呑み込む。 酌を交わして酒の場を整えた剣士は、自分の杯に酒をなみなみと注ぎ、溢れさせる。彼女は酒が零れるのにも構わず、勢いよく腕を伸ばして同席の二人に乾杯する。すると、瀧が再び杯に継ぎ足して、桜が心ばかりにとその花びらを肴にと添える。 それらを受け取った剣士は、質朴に――けれども見る者には優雅にしか見えない動作で杯を口に運んだ。まずは、杯の淵に桜が添えてくれた肴を舌でさらう。その鮮やかに広がる、春風のように爽やかでけれど芳しい薫りを味わう。そして、喉を焼くほどに強い酒を一気に呑み乾した。 口元に拭い、微笑みを絶やさない彼女は杯を再び掲げ、さらなる酌を要求した。 It is best taste.
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