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泣いているようにも見える少女の肩を、一人の少年が抱き寄せた。深海のように青い瞳を見開いた少女が胸に納まるその振動で、少年の髪が揺れる。白く糸のように細い時雨みたいな髪だ。
少年は軽くまぶたを閉じて、少女の雨に濡れて一層麗しさを増した髪に顔を寄せる。待ちわびた恋人の香りが、少年の胸を満たす。
嫌い、と少女が呟いた。キミが嫌い、と言って少女は碧玉の瞳を閉じる。
どうして、と少年は尋ねない。ただ透き通る雨粒の瞳で、少女に見入っていた。その哀しみに染まる青い瞳を見ることは叶わないと知りつつも。
そばにいてくれないくせに、好きとか都合のいいことを言うキミは、嫌い、と少女が続ける。雨よりも強く降る言葉を、少年は黙って聴いていた。
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