第一話。

1/2
前へ
/15ページ
次へ

第一話。

*+*第一話*+* 桜も散り、もう6月になっていた頃。 俺、柊紅蓮はまだ、2ヶ月しか居ない教室に嫌気がさしてきていた。 *** 「んで、柊はどっちが好み?」 大東は雑誌を開きながら彼に問う。柊、と呼ばれた男は眉を寄せてあからさまに、困った顔をしてみせた。暫く経っても紅蓮は迷ったまま、雑誌を見つめている。ハッキリ言うと、彼は興味がないのだ。 困惑の表情のまま、雑誌から視線を外す。すると、銀色の髪が紅蓮の視界に入った。彼女も紅蓮のことに気付いたのか、笑いかける。 「おい、柊ー、どっちなんだよー」 痺れを切らした大東は紅蓮に呼び掛けた。それに反応した紅蓮は、んー、とか、あー、とか、曖昧な言葉しか出さない。 すると、紅蓮の横にふいに、誰かがやってきた。ふわり、と独特な匂いが紅蓮の嗅覚を擽る。 「えっ?」 そして、長袖で隠れた白い右手が伸びてきて、右側の女の子を指差す。紅蓮が振り向く前に、先にその人物が口を開いた。 「僕は、こっちの子の方が好きかな」 ふわりと笑って大東達に言えば、一瞬は驚いたものの、直ぐに大東達は彼に話しかける。呆然として驚いたままの紅蓮に、彼はニッコリと笑ってみせた。 「いきなり、話に入っちゃってごめんね? 楽しそうだったから、つい、さ」 笑顔を絶やさずに言う唖李栖に、大東達も笑う。だが、紅蓮は驚いたままだった。瞬時に理解したのだ。“助けてくれた”と。 「僕の名前は、知ってるかな?」 ふわり、と女の子のような笑みで彼は笑う。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加