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「ああ。僕には羊は一匹も懐いてくれなかったからね。キミと違って」
楽しげに手にした杖をくるくる回しながら、旅立つ少年は応えた。その空色の瞳は、まだ見ぬ世界を描いて輝いている。
そんな様子と返答に、鷹匠の少年はより一層不安になった。
二人は、親友であり、唯一の同世代であり、強い絆を持つ家族だ。こんな高原では、人は他人を信じて頼りながら生きていくしかない。だから、最も信頼出来る相手を失うことが、鷹匠の少年はどうしようもなく怖かった。
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