act,2 『情熱 from赤木剛憲』

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深体大進学の話が流れ、元から志望していた医大に進学した。 もちろんバスケは続けたが、医大故に、“バスケ一筋”の日々とはいかなかった。 授業や実験、実習… その合間を縫っての練習… 無論、手を抜いていたわけではない。 けれど、バスケをしている時でさえ、なにか、空虚感みたいなものが常にまとわりついていた。 『物足りない』 そうはっきりと自覚していた。 けれど、どうにかしようと思っても、どうにもできなかった。 結局、バスケは大学を卒業するまで続けはしたけれど、物足りないまま終わってしまった。 そしてそのまま社会人になり、今ではすっかり遠い存在になってしまった。 …… 『なんだか、赤木らしくなかったぜ。』 …… …… 「そんなこと、言ったよなあ~。覚えてるよ。」 焼鳥を頬張りながら、三井は軽く、焼酎を一口呑む。 「……そうか。俺はてっきり、忘れてるもんだと思ってたがな。」 自分も一口、口に含む。 口の中いっぱいに、焼酎の焼ける感覚が広がる。 「忘れるわけないだろ?まだ三年くらいしか経ってないんだぜ?」 「…そうか。そうだよな。」 何故か少し、口元が緩んだ。
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