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すっかり夜も更けた街。
心なしか、光っているネオンの数も減り、冬の寒さが、肌をかすめる。
ほろ酔い気分のまま、三井と二人、あてもなく歩いている。
遠くに聞こえる救急車のサイレンの音が、やけに耳に響く。
「なあ三井…。」
「んー?」
「おまえは、あの二年を、取り戻せたか?」
少し考え込んで、三井は応えた。
「あぁ。おまえらの、おかげでな。」
……
桜木に、『ゴリの分まで』と言われた時。
その時俺は、彼が羨ましく思えた。
そして、妬ましかった。
自分が手に入れる事ができなかったもの……
それを手に入れ、今もなお、突き進もうとしている。
あの頃と変わらずに、純粋に歩んでいる彼。
でも、素直に背中を押してやる気持ちになれなかった自分。
あの頃のように、熱くなれるものが、今の自分にはあるのだろうか。
「じゃあ……今からそれを、探さなきゃだな。」
そう言って、三井は「またな」と手を振った。
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