act,3 『君のために from木暮公延』

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「あれ?木暮さん?」 空の色が、少しずつ夕方に向かっている。 でも、雑踏の流れは穏やかで、寒いけど、気持ちのいい午後。 プラプラと歩いていると、見慣れた顔の後輩が、太陽のような笑顔で声をかけてきた。 「おぉ、宮城じゃないか。久々だな~。」 「本当っすよね。いつ以来?」 「確か……あれだよ、桜木の送別会じゃないかな?」 「そっか~…じゃあ大体一年ぶりくらいっすかね。」 社会人も三年目を迎え、忙しさが一気に増した。 課せられる責任も重くなり、ずいぶんと心にゆとりが失くなってきている気がする。 今の宮城との会話。 『一年ぶりくらい』 その言葉一つとっても、そんな風に感じてしまう。 …… 「木暮さん?どうかしたんすか?」 宮城の声で、ハッと我に帰る。 すぐに考え込んでしまうのも、自分に余裕がないからなのだろうか。 「あっ、いや、すまんすまん。何でもないよ。」 「そーすか?やっぱりサラリーマンってのはキツイんですかい?」 「んー……まあ、な。楽ではないよ。やっぱ。」 「ふーん……まあ確かに大変じゃない仕事なんぞないっすよねぇ~。」 首の後ろに両手を回して、宮城は少し、空を仰いだ。
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