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「あれ?木暮さん?」
空の色が、少しずつ夕方に向かっている。
でも、雑踏の流れは穏やかで、寒いけど、気持ちのいい午後。
プラプラと歩いていると、見慣れた顔の後輩が、太陽のような笑顔で声をかけてきた。
「おぉ、宮城じゃないか。久々だな~。」
「本当っすよね。いつ以来?」
「確か……あれだよ、桜木の送別会じゃないかな?」
「そっか~…じゃあ大体一年ぶりくらいっすかね。」
社会人も三年目を迎え、忙しさが一気に増した。
課せられる責任も重くなり、ずいぶんと心にゆとりが失くなってきている気がする。
今の宮城との会話。
『一年ぶりくらい』
その言葉一つとっても、そんな風に感じてしまう。
……
「木暮さん?どうかしたんすか?」
宮城の声で、ハッと我に帰る。
すぐに考え込んでしまうのも、自分に余裕がないからなのだろうか。
「あっ、いや、すまんすまん。何でもないよ。」
「そーすか?やっぱりサラリーマンってのはキツイんですかい?」
「んー……まあ、な。楽ではないよ。やっぱ。」
「ふーん……まあ確かに大変じゃない仕事なんぞないっすよねぇ~。」
首の後ろに両手を回して、宮城は少し、空を仰いだ。
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