act,3 『君のために from木暮公延』

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バスケをやっていた頃は、まるで夢のようだった。 純粋な気持ちで、ただただ夢中になってボールを追いかける…… だから、何にでも素直になれたし、だから、『楽しい』と思えた。 でも今は、そんな毎日ではない。 仕事に不満があるわけではないけれど、常に、何かに疑問を感じていた。 その『何か』の正体は、自分でも分からない。 だから、何か窮屈に思えたし、どこかに虚しさを感じていた。 『じゃあ、公ちゃんのしたい事って、何?』 それが分かっていたらどんなに楽か。 『分からなくてもいいじゃない。分からないなりに、殻を破る挑戦をすれば?』 …… その言葉で、モヤモヤしていたものが、一気に晴れる。 そうだ。 一歩を踏み出してみよう。 体力をつけたくて、バスケに挑戦した時のように… …… 『晴子に?』 『うん。ちょっと、買い物に付き合ってほしくてさ。』 『買い物?何買うんだよ。』 『指輪。』 『指輪?』 『あぁ…指輪だよ。ほら、俺ってあんまりそーゆーセンスないし、女の子がどんなものが好きかなんてわからないしさ。』 『……しかし木暮。おまえ、4月から上海に転勤だろ?どーするんだよ。』 『……赤木。にぶいな~おまえは。』 『むっ…どういうことだよ。』 『一緒に行くための指輪だよ。』 一世一代の『決心』を胸に、俺は、誓おう。 生きるヒントをくれた、君のために…… おしまい
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