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バスケをやっていた頃は、まるで夢のようだった。
純粋な気持ちで、ただただ夢中になってボールを追いかける……
だから、何にでも素直になれたし、だから、『楽しい』と思えた。
でも今は、そんな毎日ではない。
仕事に不満があるわけではないけれど、常に、何かに疑問を感じていた。
その『何か』の正体は、自分でも分からない。
だから、何か窮屈に思えたし、どこかに虚しさを感じていた。
『じゃあ、公ちゃんのしたい事って、何?』
それが分かっていたらどんなに楽か。
『分からなくてもいいじゃない。分からないなりに、殻を破る挑戦をすれば?』
……
その言葉で、モヤモヤしていたものが、一気に晴れる。
そうだ。
一歩を踏み出してみよう。
体力をつけたくて、バスケに挑戦した時のように…
……
『晴子に?』
『うん。ちょっと、買い物に付き合ってほしくてさ。』
『買い物?何買うんだよ。』
『指輪。』
『指輪?』
『あぁ…指輪だよ。ほら、俺ってあんまりそーゆーセンスないし、女の子がどんなものが好きかなんてわからないしさ。』
『……しかし木暮。おまえ、4月から上海に転勤だろ?どーするんだよ。』
『……赤木。にぶいな~おまえは。』
『むっ…どういうことだよ。』
『一緒に行くための指輪だよ。』
一世一代の『決心』を胸に、俺は、誓おう。
生きるヒントをくれた、君のために……
おしまい
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