act,4 『ふるさと from沢北栄治』

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あの夏。 確かに俺は、アメリカへ行くはずだった。 より高みを求めて、新しい世界に足を踏み入れるはずだった。 でも結局、俺は、アメリカへは行かなかった。 …… 「もしもし?テツ?」 「お~…どうした?久々だなぁ。」 「うん。久々。」 「そっちはどうだ?やっぱ寒いか?」 「まあね。雪もそこそこ降ってるよ。」 「そうか。」 「うん。だから時々、なんとな~く思い出すよ。そっち。」 「……栄治。」 「?」 「たまには…都合がつく時でいい。こっちに、帰ってこいよ。」 …… 思い知らされた。 もちろん、勝負の世界に『絶対』などという言葉はない。 チームとしても、個人としても、しっかり戒めているつもりだった。 でも、あんな形で負けるなんて、全く思っていなかった。 あの時ほど、“絶対”などないことを痛感したことはない。 『アメリカに行く前に、叩き潰しておかなければならない奴が、まだたくさんいる』 そう感じた時、決まりかけていたアメリカ留学の話を白紙にしている自分がいた。
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