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「何度も言いますけど、俺、あん時普通に赤木さんの父兄かと思いましたよ。」
ニヤニヤしながらそう言えば、ギロッと睨み返された。
そして、鋭い眼光はそのままで、
「沢北。おまえ、まけてやんねえぞ。」
と、静かに、低い声ですごまれた。
そんなやりとりを見て、
「ま~ま~。魚住さんも抑えて抑えて。せっかく美味しい料理と酒をいただきにきたんですから。」
と、仙道が魚住さんを宥めた。
仙道もまた、大学卒業を機にアメリカへやって来た。
正確に言えば、短期留学で二度来ているので、大学在学中から、と言っても過言ではない。
もともと中学の時に対戦はしていたため、顔と名前は覚えていた。
そして、彼が留学してきた際、俺の所属するチームの練習にも混じる機会があった。
それを機に、奴とは仲良くなった。
以前帰国した時にも、観光がてら神奈川にやって来て、魚住さんの店で飲み明かした事があった。
「そーいえば、流川はどうしているんだ?」
思い出したかのように、魚住さんが問いかける。
桂剥きをしている大根は、煮物にでも使うのだろう。
綺麗に皮が剥かれている。
「あいつなら……まあ…な。」
「ん~……何とも言えないっすね。無口で無愛想なとこはそのまんまだけど。」
「……あまりうまくいってないのか?」
「いや、プレイは問題ないんですよ。これからこれから。」
「じゃあ何が何とも言えないんだ?」
すると、仙道は俺をチラッと見て、
「英語がね、できないんですよ。沢北みたいに。」
と言い放った。
「はは、沢北。元高校バスケナンバーワンプレーヤーも、言葉の壁はなかなか越えられないようだな。」
そう言って、魚住さんは楽しそうに鼻で笑った。
「うるさいな~。仕方ないじゃないすか!俺、日本人だもん。」
「…沢北。」
「なんだよ。」
少しむくれたような態度をわざととる。
すると、仙道はその紳士的な笑みを浮かべてまたもや言い放つ。
「俺も、日本人だけど?」
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