act,4 『ふるさと from沢北栄治』

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「何度も言いますけど、俺、あん時普通に赤木さんの父兄かと思いましたよ。」 ニヤニヤしながらそう言えば、ギロッと睨み返された。 そして、鋭い眼光はそのままで、 「沢北。おまえ、まけてやんねえぞ。」 と、静かに、低い声ですごまれた。 そんなやりとりを見て、 「ま~ま~。魚住さんも抑えて抑えて。せっかく美味しい料理と酒をいただきにきたんですから。」 と、仙道が魚住さんを宥めた。 仙道もまた、大学卒業を機にアメリカへやって来た。 正確に言えば、短期留学で二度来ているので、大学在学中から、と言っても過言ではない。 もともと中学の時に対戦はしていたため、顔と名前は覚えていた。 そして、彼が留学してきた際、俺の所属するチームの練習にも混じる機会があった。 それを機に、奴とは仲良くなった。 以前帰国した時にも、観光がてら神奈川にやって来て、魚住さんの店で飲み明かした事があった。 「そーいえば、流川はどうしているんだ?」 思い出したかのように、魚住さんが問いかける。 桂剥きをしている大根は、煮物にでも使うのだろう。 綺麗に皮が剥かれている。 「あいつなら……まあ…な。」 「ん~……何とも言えないっすね。無口で無愛想なとこはそのまんまだけど。」 「……あまりうまくいってないのか?」 「いや、プレイは問題ないんですよ。これからこれから。」 「じゃあ何が何とも言えないんだ?」 すると、仙道は俺をチラッと見て、 「英語がね、できないんですよ。沢北みたいに。」 と言い放った。 「はは、沢北。元高校バスケナンバーワンプレーヤーも、言葉の壁はなかなか越えられないようだな。」 そう言って、魚住さんは楽しそうに鼻で笑った。 「うるさいな~。仕方ないじゃないすか!俺、日本人だもん。」 「…沢北。」 「なんだよ。」 少しむくれたような態度をわざととる。 すると、仙道はその紳士的な笑みを浮かべてまたもや言い放つ。 「俺も、日本人だけど?」
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