act,1 『メッセージ from水戸洋平』

4/6
前へ
/43ページ
次へ
19で結婚して、ハタチで帆乃佳が産まれた。 自分でも驚くくらい、自分が築いた“家族”は居心地が良かった。 若くして結婚をしたことについて、確かに楽ではないことはたくさんあった。 でも、月並みだけど、幸せだった。 一年半前、妻のみどりが末期癌であることが分かった。 医者には、もう助からないと言われた。 「あの時のおまえの事は、今でもはっきり覚えてるよ。」 「はは…。忘れてよ、も~。」 「ふっ…。どうやったって、忘れられんよ。」 「……そんなに?」 「ああ……まだ卵だったとはいえ、俺が初めて医者として関わった、“死”だったからな……」 告知を受けた時、俺は、それはそれは取り乱した。 インターンで来ていた赤木さんに取り押さえられるまで、我を忘れていた。 それほどに、みどりを“失う”という事実を受け入れられなかった。 …… 「帆乃佳、今日の保育園の迎え、花道兄ちゃんが来てくれるからな。」 「えーっ?本当?やったーっ!」 この頃、俺はすっかり、一つの事しか見れなくなっていた。 仕事とみどりの看病にばかり追われ、帆乃佳の事は、花道や、大楠らに任せっきりになっていた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加