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19で結婚して、ハタチで帆乃佳が産まれた。
自分でも驚くくらい、自分が築いた“家族”は居心地が良かった。
若くして結婚をしたことについて、確かに楽ではないことはたくさんあった。
でも、月並みだけど、幸せだった。
一年半前、妻のみどりが末期癌であることが分かった。
医者には、もう助からないと言われた。
「あの時のおまえの事は、今でもはっきり覚えてるよ。」
「はは…。忘れてよ、も~。」
「ふっ…。どうやったって、忘れられんよ。」
「……そんなに?」
「ああ……まだ卵だったとはいえ、俺が初めて医者として関わった、“死”だったからな……」
告知を受けた時、俺は、それはそれは取り乱した。
インターンで来ていた赤木さんに取り押さえられるまで、我を忘れていた。
それほどに、みどりを“失う”という事実を受け入れられなかった。
……
「帆乃佳、今日の保育園の迎え、花道兄ちゃんが来てくれるからな。」
「えーっ?本当?やったーっ!」
この頃、俺はすっかり、一つの事しか見れなくなっていた。
仕事とみどりの看病にばかり追われ、帆乃佳の事は、花道や、大楠らに任せっきりになっていた。
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