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家に着くと、通院の疲れもあったためか、帆乃佳はすぐに、寝息をたて始めた。
その姿を見て、安心する。
『あいつ、明後日に帰ってくるんだ。』
ベランダに出て、一服する。
外はまだ雪が降っているから、少し着込まないと寒い。
煙と一緒に吐き出される息は白くて、何だか少し、安堵した。
……
『洋平、俺、ちょっと頑張ってくるよ。』
……
言えなかった。
軽く背中を叩いて…
少しからかい半分の皮肉も込めて…
いつもは言えてた一言が、言えなかった。
自分が情けなくて、恥ずかしくて…
でも、彼にエールを送りたい気持ちは、変わらずに在り続けている。
……
「パパ?」
振り向くと、目をこすりながら、帆乃佳が立っていた。
「どうした?目、覚めちゃったか?」
「……少し、喉が痛い。」
「…そっか。じゃあポカリ、飲もっか。」
「うん!」
分かってた。
彼は、支えてくれていた。
本気で心配してくれていた。
弱かった俺と幼い帆乃佳を、本気で心配してくれていた。
……
「ありがとな。」
そっと呟く。
「えっ?パパ、何言ってるの?」
「あっ、すまんすまん。何でもないんだ。それより帆乃佳、今度、花道兄ちゃんが帰ってくるんだぞ。」
「えっ?本当?」
「あぁ。会いに行くから、早く風邪、治すんだぞ。」
「うん!……パパ、一緒に“頑張って”って、応援しようね。」
「……あぁ。そうだな。」
……
『洋平……頑張るんだぞ!帆乃佳と死んだみどりさんと…おまえのためにも……』
……
「あぁ…おまえも、頑張れよ。」
おしまい
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